アウェイ遠征情報館

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【アウェイ遠征 ものがたり】 京都遠征「始まりは1杯のラーメンだった」明治安田J1リーグ第38節2024年12月8日(京都サンガF.C.vs東京ヴェルディ)

 

※この物語は筆者の実体験に基づくフィクションです。


主人公:猫実 こいと(ねこざね こいと)ー サッカーとラーメンが好きな女の子

 

「始まりは1杯のラーメンだった」

 

猫実こいと。

 

ここは神奈川県の片田舎。

 

深夜に人気のなくなった通り沿いに小さなラーメン屋が灯りをともしていた。

 

私のお目当ては、看板メニューのとんこつラーメン。

 

深夜のアウェイ遠征前には、ここのラーメンを食べるのが恒例行事になっている。

 

店内にいるのは、店主と私、それから中年のおじさんが一人。


たった十席のカウンターだけの店――その窓際の端っこに腰を下ろすと、店主が手慣れた動きで食券を受け取りに来た。

 

「かためでお願いします」

 

とんこつは“かため”、家系は“うすめ・少なめ”――これが私のこだわりなのだ。


「はいよ」


ぶっきらぼうだけどどこか温かい声とともに、水の入ったコップがカウンターにコトンと置かれる。

 

スマホで時刻とちらりと確認すると午前0時を回り、日付は12月8日になっていた。


こんな田舎町で深夜営業を続けているラーメン屋は本当に貴重だ。

 

ありがたみを噛みしめつつ、水をひと口だけ飲む。

 


今日――12月8日。


J1リーグ最終節の日だ。

 

私の愛する東京ヴェルディは、サンガスタジアムで京都サンガF.C.と対戦する。

 

ここから車で京都へ向かう私は、胸の高鳴りを抑えるため深呼吸を繰り返していた。

 

アウェイ遠征は楽しいことばかりじゃない。

 

寒いし、眠いし、負ければ心も折れる。

 

でも、だからこそ全部まとめて味わい尽くしたい。

 

――それが“アウェイサポーター”としてのポリシーなのだ。

 

24時間後、私はきっとベッドで屍と化している。

 

わかっているけど、やっぱり行く。

 

「お待ち」

 

威勢の良い声とともにラーメンが私の目の前に運ばれてきた。

 

ふわりと立ちのぼる湯気――


(あれ、この店主……飯田主審にそっくり)

 

などと余計なことを考えつつ、鼻先をくすぐる豚骨の香りに意識を奪われる。

 

 

深夜のラーメンはどうしてこんなにも背徳的なのだろうか。


高鳴る鼓動を落ち着かせるように髪をひとつに束ねると、ゴムがぱちん、と小さく跳ねた。

 

「いただきます」

 

レンゲでスープをすくう――とろりと舌に絡むコク。


ああ、うまい。


この瞬間から私のアウェイ遠征が始まるのだ。

 

夢中で麺をすする。

 

 

少し硬めに茹でられた細麺が、スープと絶妙に絡み合う。

 

深夜にラーメンを食べる罪悪感? そんなものは、華麗なドリブルで相手をかわす森田晃樹のように、するりとかわしてしまえばいい。

 

気づけば、丼の底に残るスープはあとわずか。

 

名残惜しさを断ち切るように、両手で丼を持ち上げ、最後の一滴まで飲み干す。

 

思わず笑みがこぼれ、思わず口をついて出た言葉は、

 

「行ってきます」

 

店主が目を丸くし、隣の常連客と顔を見合わせる。

 

しまった、と気づいた時にはもう遅い。

 

顔にカッと熱が集まるのを感じながら、私は慌てて言い直した。

 

「まっ、間違えました!ごちそうさまです...」

 

足早に店を出ようとする私の背中に、店主の少し呆れたような、でも温かい声が追いかけてきた。

 

「行ってらっしゃい」

 

さあ、京都へ行こう。

 

私の、私たちの、長い一日が始まる。

 

次のお話し

 

www.hirotaka28.com

 

 

 

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